2009年11月9日月曜日

5. 空港からの電話。

私はファイスブックを使いこなしていないが、マイクが私のフレンドになってから、私も時々ファイスブックでみんなの近況をチェックしたりするようになった。グラムも写真なしで登録していた。

よく見ると、グラムがチャットにオンしていた。

ハイ。

ハイ。

入院していたと聞いたけれど、大丈夫?

大丈夫。思ったより早くアメリカに帰れそうだ。
けれど、お金がない。ジョージの金を盗もうか?

それは面白くない冗談。
こっちに戻っても、未支払いの税金や養育費で牢獄に入れられるだけだから、そっちにいた方がいいんじゃない。

払えるなら払いたい。それでもここに居るよりましだ。
ここでは暮らしていけない。仕事もないし、希望もない。最悪だ。

スカイプに繋げれば、もっと簡単にこれから話が出来るわよ。


どうやったらいい?

スカイプのサイトに行けば、分かるわ。

それじゃ。

簡単なチャットだった。
企みを感じさせるずる賢そうな彼の嫌な一面を見せている会話だった。

それから1週間後、スカイプを繋げたと言って来た。
私はスカイプで日本の友達といつでも話せる状態にしているので、これでグラムとも簡単に連絡出来、状況が把握出来るようになると思った。
これが7月7日のこと。

それから、スカイプをオンにして待ったが、彼がオンしていることはほとんどなかった。
イギリスに戻って一ヶ月,グラムもすこしは落ち着いて来て、仕事でも見つけたかと期待した。

私は母が死んでから毎年日本に帰っている。一回忌,納骨、3回忌、家の片付け、母が生きていた時より帰国しなければならないというのは悲しいことだ。冬にしなければならない3回忌がゼントの高校進学のこともあり帰れなかったので、この夏休みに3回忌をすることにしていた。7月26日から8月19日までの長期間の帰国である。

7月23日。
ケントの携帯が鳴る。
ケントは当然、I Dを見る。

”マム、ダッドから?”

なんで?

電話を取ったケントは不振そうに電話の話しを聞いている。

”マム、変な電話。ダッドを空港まで向かいに来いとこの人は言っている。”

何?誰?貸して。

電話をとって、こわごわ、

ハロー

”僕はコンチネンタル航空の添乗員のジョンというものですが、グラムを迎えに来ていただきたいのです。ターミナルCのxxxxxxまで。
申し訳ないのですが、彼の電話を調べさせていただいて、息子とあったので、お電話を差し上げているんですが。”

一体私はなんと対応していいのだろうか?何てことなのだ?どうしてグラムはニューアークに居るんだ?

分かりました。迎えにいきますが、そちらと連絡出来る電話番号を頂けますか?

”どのくらいで来られますが?”

急いでけば、30分ぐらいで。
と電話を切ってから、イギリスのジョージに電話した。

ジョージ,どうしてグラムがニューアークに居るのよ。どういうこと? 空港からケントのところに電話があったのよ。

”今日、グラムはうちを出た。奴は二度とうちの敷居をまたがせない。奴は悪魔だ。ひどいひどい人間だ。パムにもひどいことをした。パムは二度と彼を受け入れない。
グラムを引き取ってはいけない。君はケントを守らなければ行けない。勿論、君次第だが。”

君次第だと言っても、今うちに、空港から引き取ってくれと電話が。


”何度も言うが、彼はひどいひどい人間だ。”

グラムはお金がないからアメリカには帰れないと言っていたのに、どうしてアメリカにいるの?

”お金は俺がやった。けれど俺が追い出したのではない。あいつが帰ると言ったんだ。
グラムを迎えにいってはならない。君次第だが。”

この君次第という言葉が引っかかって、いい気がしなかった。
こんなにグラムに怒っているジョージを知らない。グラムのアル中癖は彼が一番しているはずなので、これほど怒っているとは、余程のことがあったのだ。
これで一応状況は把握できた。ジョージとの電話を切ってから、私は落ち着いて考えた。
そして、空港のジョンに電話した。

私達とグラムの関係を説明させていただきたいのですが、あなたがおかけになったグラムの息子は14歳で、私は彼と離婚して12年になります。もし自分が分からないほど酔っぱらっているようでしたら、息子のためにもここには引き取れないです。

”申し訳ありませんでした。ご事情も分かりませんでしたので。電話番号に息子さんとあったので電話させていただきました。既に成人している方だと思いました。”

グラムは電話が出来ないほど酔っぱらっているんですか?


”ええ、イギリスにはお兄さんのお葬式のために帰ったとかで、ずっと泣かれておりまして。”

そうですか。
彼は12年間、一緒にいたガールフレンドがいます。彼女の名前はメアリです。彼女に連絡して頂けないでしょうか?

”分かりました。大変申し訳ありませんでした。こちらでなんとかさせていただきます。”

と言って電話を切られた。

それから2時間後,私は心配して空港のジョンにもう一度電話を入れた。

どうなりましたか?


”1時間ほど前にタクシーでお友達のところに行かれました。
お電話を差し上げると,その方はグラムさんのことを良くご存知で、タクシーでうちによこしてくださいとのことでした。”

と丁寧に説明してくださった。
メアリのところではなくPという友達のところに行った。そこまでは分かった。

次の朝、電話が鳴った。
グラムだった。

ハイ

”フージ、NYに戻って来た。”(グラムは私のことを時々、フージと呼ぶ)

知っている。
グラム,覚えてないのね。昨日、空港からケントの携帯に電話があったのよ。 酔っぱらっている父親を迎えに来いって。

さすがに、覚えていないグラムにはショックだったか、すぐに返事をしない。

添乗員の名前はジョン、覚えてる?兄の葬式でイギリスに帰っていたって言って飲んでたの?

”確かに、ジョンという名前だった。父親の葬式って言ったと思ったんだが。
すまん。”
といって、電話を切ってしまった。

私はまたイギリスのジョージに電話した。

そちらで何があったかは私は知らないけれど、グラムは兄の葬式で帰っていたと言って酒を飲んだらしい。グラムが教えてうちに電話があったのではなく、添乗員が勝手にグラムの電話で見つけた電話癌号が、ケントの電話番号で、しかもその息子は既に成人していると思ったらしい。今、グラムから電話があったけれど空港でもことは全く覚えていないようだった。
と昨日のことを説明した。

切っても切れないあの2人の関係だけに、今回の出来事は悲しい。ジョージにこれ以上、グラムのことを悪く思って欲しくなかった。グラムはジョージを失くしたら、どこへ行くというのだ。一体、これから誰と話しをするのだ?

兄が死んだと言ってそこまで飲むほど、一体ジョージとの間に何があったのか?

グラントは四面楚歌の状態でしかも一文無しでNYに戻って来た。最愛のメアリもジョージもいない。その上、私達は三日後には日本に発ち、3週間帰ってこない。一体、グラムはどうするのだろうか?

ここで日本に帰ることをラッキーだと思うしかないわね。日本でゆっくりして来なさいよ。
とへレンの言葉。

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