2009年11月12日木曜日

10. 日本から戻ると。

日本から戻って、メールのチェックをしていると
早速グラムから、25日ぶりのメール。

そこに2,3日泊めてくれないか?

私達は今帰ったところで荷物も開けていなし、時差ぼけだし、くたくたよ。


オ− マイ ゴット。早速、始まった。
次の日の朝,電話。

ハロー

”フージ、日本はどうだった?楽しんで来たかい?”
明るく話そうとしているが、今にでも声のトーンが落ちそうな話し方。

まぁ、それなりに。母の居ない家に帰って片付けはつらい。

”フージ、僕はもう駄目なんだ。あぁ、とてもつらい。実は俺は膵臓癌なんだ。カレンにも電話した。”

しばらくのサイレント。

”くそー、酒の奴。”
と言うが、どうやら泣いているようである。

”詳しいことは来週、医者に会うのでその時分かる。”

来週のいつ?私は仕事先に行く予定があるけれど、一緒に病院に行こうか?

”いや、一人で大丈夫だ。”

そう、本当に大丈夫? じゃ、詳しいことが分かったら電話ちょうだい?

泣きながら彼は電話を切った。

私の居ない間、グラムの状況は好転している訳もなかった。
これは2度目の癌報告である。ああれだけ酒を飲んでいたら、身体を壊すのが普通なので、信じようと思えば、簡単に信じられる話なのである。

しかし、この言葉は2年前にも聞いているのである。
あれは父の日の前の日で、私達は父の日にサッカーのトーナメントに行くので見に来ないかと誘ったとき、グラムは自分は癌だと言ったのだ。
その次の日に母が電話して来て、私がグラムのことを言うと、私も言わなくちゃいけないことがあるのだけど、と口を濁した。

なに?いいこと悪いこと?

グラムと同じ。

どこの?

女にしかないところ。

で、どのくらい悪いの?

ここ一年,抗がん剤を打って、少し良くなったから手術をしようと思うの。

いつ?

2週間後。

母が末期の乳癌で手術をするというのだ。彼女は今日という日まで全く彼女の病状をはなさなかった。
私は息子の行き先が決まり次第、日本に飛んだ。日本には手術の3日前に着いた。
私の第2のブラックホール、第1の時とはまた違った深いブラックホールに入ってしまった。しかも、それは父と同じで、嫌もっと長くかかるのかもしれない。私が死ぬまで引きずるのかもしれない。
その母は死んでしまったのに、グラムは生きているのである。
しかし、両親を癌で亡くした私には聞き流せない話である。

2年前、彼はケントのサッカートーナメントに来るはずだった。彼は3時間も迷ってトーナメントに来たときには全ての試合は終わっていた。
彼が来ることが分っていたので、私達はチームメイトの車に同乗して行ったので、グラムが来るのを待たなければならなかった。私達は呆れて口もきけなかった。
メアリの4WD,ハイクラスのレンジローバーで来た。それに同乗したが、彼が酔っぱらっているのは明らかで、あの運転の横には座っていれず、私に運転させてくれと頼んだ。
高い車だからとグラムは言ってくれたが、高かろうと安かろうと私の方が確実に安全運転できる。高速道路の路肩に停めさせて、私に変わってもらった。
癌で死ぬと言っている人が息子のトーナメントにも来れず、車が運転出来ないほど、酔っぱらっている。なんということだ。
家で仮眠させ、グラムは起きると帰らなくてはいけないと言って帰って行った。

一体、何しに来たのか?

私は彼の生活のことを尋かない、この状態においても尋かない。
尋いたところでその話の裏付けは誰からも得られないのだし、私にどうすることも出来ない。
その上、彼は、
大丈夫。何とかする。心配しなくていい。
と答えるのを知っている。

この辺りから、メアリとはもう終わったと口に出していたが、ニューヨークを引き払ってコネチカットに引っ越したのもメアリの本宅の近くだったし、うちに来るときはこの車かレキサスで来た。どちらもメアリのである。彼の仕事の社長もメアリ。
メアリにはもうお金がないとも言い出した。1ブロックの地所を持っていると言ったのは、そこに遊びに行ったゼントの話だが、その家を売って引っ越したとも聞いた。
一体何が起こっているのか?

ケントはこう言った。
5億持っている人が4億失してお金がないと言うけれど、まだ1億持っている。
僕たちはその1億も持っていない。

12歳の子の言葉としては名言だと思う。

メアリの金銭状態はしらないが、うちに養育費は入っていないのは確かである。

私はへレンにメールした。
日本から帰って来たんだけど、グラムから連絡あった?
と簡単なメールにした。

おかえり,フーディ、楽しい旅行だったと思うけれど、どうだった? グラムから、日曜日の夕方頃電話があったわ。私たちは、結構沢山話したけれど、私はオヘア空港に居て、雑音がするし、聞き取りにくかったの。しかも、グラムは膵臓癌だと言って泣くし。 彼はスコットランドに帰ろうかと思っているが、まだビルとキャロルには話していなし、決まっている訳ではないとも言っていたわ。彼は非常に感情的で不安定な感じ。彼は友達のところに居候しているけれど、友達の彼女がグラムに出て行って欲しいと言っているらしいわ。彼が行くところはどこもないと思うのよ。この先、彼がどうなるのか想像もできないわ。

子供たちにこの週の初めに彼の膵臓癌のこと話したわ。クレークは火曜日からグラムに連絡しているけれど、グラムから音沙汰がないらしいわ。 私もグラムに今後のこととか聞いているんだけれど、何も言ってこない.ジュリアはマイクとファイスブックで話したけれど、マイクは何も知らないと言っているようだわ。こんな状態だから何を信じたらいいのか分からない。クレークは心配しているし。

グラントのこと分かったら連絡ちょうだい。私は寝るわ.明日、ジュリアをカレッジに連れて行かなくてはならないし、クレークは来週から1週間、こっちに戻ってくる。
それじゃ、また。

と言う長いメールが戻って来た。

クレークからグラムはどこにいるかというメールは貰ったけれど、私も居所を知らないの。
クレークに電話して来てくれるようにいったんだけど。ジョージにも電話した。留守番電話に入っていたから。私が日本に帰っていることを忘れていたらしいわ。
グラムが電話して来たときのこと、もう少し詳しく話して。
電話ちょうだい。

と返した。

グラムから連絡があったら、とにかくこっちに連絡ちょうだい。
クレークとジュリアは彼に会わなくちゃ。
彼がかけて来たときには、恐怖感、自責の念、涙もろく。おそらく、酔っぱらっていたのでは?よくわからないのよ、ずーっと泣いていたし。なんか悲しかったわ。
今日も一日働いて疲れてしまっているから、後日電話する。
じゃ。ラブ

どうやら、うちと同じ状況らしいということは分かった。
うちに泊めてくれというメールの理由も分かった。

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