2009年11月5日木曜日

1. 電話がなる。

電話がなる。
取る前にIDを確かめる。
グラムから。

彼から電話があるのは彼が気が向いたときだけ.ということは、なければずーっとない訳で、こういった関係に慣れてしまっている。

しかし、母の日をしてくれたお返しに,父の日はここで手巻き寿司と誘ってあったので、
父の日に来るのかどうかとか、その週にあるケントの卒業式のことなど聞かなくちゃと思っていたので、ラッキーと電話を取った。

唐突に、彼はこう言った。
イギリスに発たなければならない。

いつ?

”明日。’

何時?

”7時。”

どうして?

”メアリが僕をイギリスに送り返す。”

何?

”帰りたくないんだ。”

私はしばし言葉を失った。
これは本当に最後なんだと思った。
彼の彼女,メアリが彼をついに追い出すのだ。あれから12年後。
涙が出た。泣きながら,

帰ったら,もう戻って来れないね。

と言うと、

”いや,帰ってくる.心配しなくていい。きっと何とかなるから。大丈夫だから。”

これが彼の最後だと思った。どういう意味の最後なのか解らないが,最後なのだ。そう思うと,涙が出て止まらない。

ニューヨークタイムズで働いている友達が僕を泊めてくれるかもしれない。でも彼は今,ラスベガスで20日には戻ってくる。それまで,君のところに居候させてくれないか?

急にそんなことを言い出した。私の答えは勿論,ノーだった。それは出来ない。
ましてや、ケントがオッケーという訳が’ない。だから,返事をしなかった。

”メアリなしで自分で生きてみたかった。”

でも、メアリなしでは生きていけないじゃない。

”あぁ、足が痛くて、荷作りなんか出来ない。”

私には彼が泣いているように聞こえた。

”僕の子供たちはアメリカにいる。メアリは僕をイギリスに帰したりしないよなぁ。”

と今度は言い出す。

メアリに聞いてみたら?

”そうだな。電話してみる。”

と言って,電話を切った。

電話を切った後、ケントにこのことを言うと、何がどうであっても、父親をここに置くのは嫌だといい切った。
イギリスに帰るということに関しても、どうでもよいと言った感じだ。
父親であるということだけで、彼の時間帯に父親というのは存在しない。だから、その父親がどこに行こうが彼にはたいした問題ではなかった。ただ,自分の時間にこの父親が入り込むのは問題だった。

悲しいかな,これが父と息子の関係なのだ。
しかも、養育費をもらっている訳でもないので、なおさら、この父親の存在は足手まといとなる。

寝るように。2人で最良の方法を考えよう。
じゃ、また明日。
とメールした。

君はいい人だね.フーディ.心配しなくていい。
僕はなんとかするし。ラブ、グラム

とメールが帰って来た。

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