2009年11月25日水曜日

13. 病院。

”ねぇ、ケント。アンタのダッドに会いにいく?

返事がない。

”会いになんて行きたくないよね。私だけでもいいかぁ。

”じゃ、行かなくてもいい?”
ほっとしている感じだ。そりゃそうか。

”そうよね。癌じゃなし。
と朝に会話を交わして、
また昼に同じことを聞くと、

”行かなくてもいいって言ったじゃないか。”

”そうだけど。アンタはいかなくても、やっぱ、私は行った方がいいと思うのよね.ひょっとしたら癌のこと調べてくれたかもしれないし。平日は行きたくないし。

”じゃ、行ってくれば?”

”そういう人ごとのようにいわないでくれる?
あの人は私の彼氏ではなくて、アンタのおとうさんなのよ。
一番、私が危惧するのは、私がこうしてあの人に優しくすると、私がグラムのことを好きだからしていると思われたくないのよ。あくまでも、私とあの人の関係には彼の息子のアンタが居ると云うことを分かっていて欲しいのよ。アンタなしで行くと、私はあの人の彼女みたいじゃないの。あの人はメアリが必要なのよ。
現在の状況において、メアリは彼の面倒を見ていないけれど。人道的に、こういう状態の人に ”勝手にしたら” と私は言えないのよ。しかも、うちに電話がかかってくるじゃない。
とにかく、グラムは自分の家がないのだから、この後どうなるのかも聞いてみないと。私には何のインフォもないし。その上、こうして、困ったときにだけに電話をかけてこられて、しばらく泊めてくれって言う訳だから。やっぱ、情報収集のためにも行った方がいいわ。 それから、いろんなこと一緒に聞いていて欲しいのよ。いざという時、私と同じことを聞いた人がいると裏付けになるし、、英語で分からないことがあっても、アンタに聞けるし。 やっぱ、アンタも一緒に来るべきだわ。

嫌そうな顔ではあったが、
”分かった。理にかなっているな。一緒に行くよ。”
と言った。

今度は場所が分かっているので、たった15分で着いた。しかも、停めるところも知っている。昨日と同じところが空いていた。

昨日の緊急の受付で面会したいというと、
Detox棟での面会は認められていないと言われた。
けれど、手紙やなんかは手渡してあげれるという。

”ドクターに話しはできないの?昨日,救急車で運ばれて、奥の部屋でドクターと話したのよ。そのドクターと話しがしたいわ。

”ドクターの名前は?”

おっと、私は名前など全く覚えていないのである。勿論、ケントも。
ケントがしきりに、あのドクターはギリシャのなまりがあったと言う。

”緊急室のドクターに聞いてくれない?彼女はギリシャなまりがあったって、息子が言っている。そう聞いてもらったら、名前、分からないかしら?

そこに座って待っていて。

待っている間、手紙を書くことにした。

ーー電話が出来る状態だったら、Keswick に電話をして欲しい。これがKeswickのインフォメーション。今を逃したら、立ち直るチャンスはないわ。私も一緒に助けるから、ここに電話して。

と書いた。

私達の隣りに黒人の女の人が彼女の兄と座っている。彼女はふらふらになって座っていることも出来ない状態。
酔っぱらっているのか?身体障害者なのか?
兄が病院の人に文句を言っていることから、私とケントは彼らの問題を理解し始めた。
どういう理由で緊急室に運ばれたのかは分からない。彼女の兄は誰かからか連絡があって、妹のトラブルを知ってルイジアナから出て来たらしい。その妹は薬を投与されて病院を出されるらしいが、立っていることも、座っていることすらできない状態。こんな状態の彼女をどうやってブルックリンまで連れて帰れというのだ。高いタクシーを呼べとでも言うのか?と兄は病院側に談判している。病院側は置いておけないので、帰ってもらわないとこちらも困ると聞く耳を持たない。
その理由が彼らの保険によるものなのか?
すでに処置はしたので、それ以上は病院の管轄ではないというのか?
私達には理由はよくわからない。
ケントはこの状況を”気の毒だ。”と私に耳打ちした。
私も気の毒だと思ったが、私の車で送りましょうかなどと言っている場合ではなかったので、見ているしか仕方がなかった。

待てど暮らせど誰も来そうにもないので、また受付に行ったら、違う人が立っているので、また同じ説明をした。すると、すぐに緊急室のドクターを呼んで来てくれた。
このドクターは隣りの黒人の兄妹のことやいろんなことでイライラを隠せないようで、私との話しもイライラしながら話した。
私の探しているグラムは緊急室にはもう居ないし、私達はもう彼の管轄ではなくなっているから、どうすることも出来ない。もう一度、受付に調べて貰いなさい。グッドラック。
ということだった。

あのドクターは、ストレスで一杯なんだわ。かわいそうなくらい,イライラしている。休養が必要だわ。 アンタの兄のクレークはERの医者になると言って大学で勉強しているけれど、彼にエマージェンシーが勤まるかしらねぇ。
と呟いてしまった。

もう一度、受付でグラムがどこに居るか調べてくれと頼んだ。
この人は丁寧に調べ直してくれた。すると、なんと、
グラムはDetox棟にはいなかった。どうやら身体に問題があって普通病棟で治療をうけている要なので、ここを出て隣りのビルに行きなさいと言ってくれた。

”最後まで諦めないことよね。ケント。 一緒に来てくれて、本当によかった。一人だとめげるわ。

全く、うちの子はこういうことに関しては、最高のつれである。
普通病棟ということは、やっぱり癌だったのかな?と頭をかすめたが、会えば何かが分かるし、最初に面会謝絶と云われて、諦めて帰らないで良かったとつくづく思った。

こうして可能性が見えるまで頑張ってみる。すると、うまくいくこともあるというのは、私がアメリカで学んだことである。
頑張っても無駄ということも確かにあるが、どちらに転ぶかは”人事を尽くして天命を待つ”か、私のサイキックに賭ける。

隣りの病棟は緊急病棟に比べると、ほっとさせてくれる。静かである。
緊急病棟はテンションが高すぎる。

グラムね。
とコンピューターで調べて、
6階で降りて右に曲がってください。xxx号室です。
また、ガードマンみたいな黒人の受付の人が言った。

私は何度も黒人の受付と繰り返したが、確かに黒人が多いのである。
しかも、受付がガードマンみたいというのは、この病院が始めてのことなので、つい、繰り返して書いてしまった。
この病院はハーレムにあるということを忘れてはいけない。昔はハーレムと云うとドキッとするほど怖いイメージがあったが、今は治安もよくなっている。
お洒落なレストランやお店も多いということも付け加えていきたい。
しかし、ここはニューヨークのハーレムでニュージャージではない。いくら治安はよくなってたといってもニューヨークである。

0 件のコメント:

コメントを投稿