月曜日、日本から戻って仕事ムードにしたいところ。グラムの電話で私は混乱状態なので、この打ち合わせで心機一転したいところだった。車がマンハッタンに入って42丁目あたり、私のいつも車を入れる駐車場に向かっているときに電話が鳴った。誰からか見なくてもグラントだということは分かった。電話をスピーカーで取った。マンハッタンでのハンドフリーでない携帯電話での会話の罰金は高い。
”Pに電話したか?”
とグラムは話し始めたが、
”今、市内を運転中なのよ。車を停めてから電話し直すわ。”
というと、
”そうだな,気をつけないといけない。後で電話してくれればいい。”
と優しく言った。
車を駐車場に入れた後、仕事先に行くまでの間に電話をしたが、ストレートに彼のボイスメールに繋がった。
今から打ち合わせだから話しはできないとメッセージを残した。
電話はそれからなかった。
打ち合わせが終わった後、YMCAまで行ってみようかなとちらっと思った。
でも,関わらずに済むなら関わらない方がいいのだ。
みんなが言うように、自ら不幸を招く必要はないのだ。
電話がグラムから電話がかからなかったので、帰ることにした。
すると、家に向かっている途中に電話があった。
”今どこにいる?”
”家に向かって走っているわ。”
”おぉ。バッテリーがなくてかけれなかったんだ。
どうやら、行くところがないようなんだ。
連れて帰って欲しかった。”
と言った。
”YMCAにはもう居れないの?”
”お金がもうないんだ。”
”ラッスル E バレイズデールに電話してみた?”
”いいや。”
”ケントのアイスホッケーの練習の後、親たちのミーティングがあるし、迎えにはいけないわ。
どこにいるの?
”56丁目あたりかな?どこにいるのかも分からない。”
と言った後,彼はうなり声をあげた。
オー・マイ・ゴット。私は静かに目を閉じた。心が痛んだ。
気が狂う寸前といううなり声だった。彼は56丁目のどこかのストリートでうなっているのである。
電話をどこかで充電しないと切れてしまうと言った後,ぷつっとすぐに切れてしまった。
私はあの声を一生忘れないと思う。凄く怖かった。
私は彼が病院を出た後、クライシスセンターに行き、その後に行くはずのラッスル E バレイズデールに電話してみた。
電話に出たブルースはこう私に説明した。
”本人に電話をここに掛けさせなさい。そうでないと受け付けられない。病院からのdetoxの証明も必要なので,詳しいことを本人から聞かないといけないから,彼にかけるようにいいなさい。”
その後にまたグラムは電話して来た。これはラッキーだった。
”ラッスル E バレイズデールは本人でないと受付出来ないと言っているわ。
メールで電話番号を送るわ。”
と言った。
電話が充電出来ないままでいるらしく,またすぐに切れた。
そしてまたかかった。
”君のくれた電話番号は間違っている,かからない。”
というのである。
掛けようとしていることは伺える。もう一息である。
”今,そこに電話をかけて喋ったところだから,かかるはず。 ブルースという人にかけて欲しいのよ。”
電話がかかる度に,私は同じことを繰り返した。
こんな細切れの電話の会話を数度か繰り返したと思う。
もし,ここに行けなければどうするのだろう?
へレンに電話した。メディカルスチューデントのクレークがヘルプ出来ないのだろうかと?
ボイスメールに残した。
メアリにダンカンという友達の収容所はどうなっているのか聞いてみようと電話したが、またボイスメールに繋がった。
1,2時間後にメアリが電話して来たとき,彼女はこういった。
”ラッスル E バレイズデールがYMCAにいるグラムを車でピックアップすることになっている。確か,迎えにいくのはブルースという名だった。”
という。
私はまた、ブルースに電話した。
グラムは電話をしたようだった。
”本人から電話がありました。それから病院に連絡して裏書きを取ったところ、detoxは終えていると云うことなので、一応,うちで引き取れると云う許可は出ました。”
”サンクスゴッド。”
”ただ,今ベットの空きがないので、しばらくYMCAに滞在して空きを待ってもらわないといけないのです。酒の飲まないようにしていただかなくてはここには入れませんよ。”
と念を押された。
”しばらくってどのくらいかかるんでしょうか?”
”1週間くらいかな?”
”そんなにかかるんですか?もっと早くならないのでしょうか?”
酒を飲んでおかしくなっているとは言えなかった。飲んでないと嘘をつかなくてはならなかった。けれど、かなり悪い状態なので早くそこに連れて行きたいと私の立場も含めて、念を押した。
それからしばらくグラムから電話はなく、アイスホッケーのミーティングが終わるまで電話は鳴らなかった。しかし、まるでこちらの状況を把握しているかのように、その部屋を出た瞬間に電話は鳴った。
今、YMCAのカウンターにいる。支払いができない。君のクレジットカードの番号を彼女に言ってくれ。
というのである。私はできるだけまわりに人がいないところまで行き、
”グラム,何を言っているの?どこの誰だか分からない人にクレジット番号なんか渡せないわ。”
と言った。
”分かった.他に聞いてみる。”
と怒って電話を切ってしまった。
こんな突然の電話で,酔っぱらいにクレジットカードの番号を教える馬鹿もいまい。
YMCAに滞在出来なくなった今、一体、ブルースはどこから彼を拾うのか?
家に帰って私はすぐにブルースに電話した。
”お金がなくなってYMCAを追い出されたみたいなんですが,どこに彼は行けばいいんでしょう?”
ブルースはクライシスセンターのことを私に説明してそこに電話するように言った。
ラファイエットのクライシスセンターは、グラントが病院を出た後に行って、ひどいところだと言って出て来てしまい、YMCAに入ったことを説明した。
それならハーレムのクライシスセンターの電話番号を教えましょう。勿論,素敵なところではないですけれど悪いところではありません。こことクライシスセンターは連携しているので,ベットが空き次第、こちらから車を出して迎えに行きます。
と言ってくれた。
グラムはひっきりなしに電話をして来た。この状態においては、こうしてグラムが電話して来ることは有り難かった。
YMCAのお金は友達が払ってくれたと言った。そんな友達がいるのだ?とクエッションマークの私。
ブルースの紹介してくれたクライシスセンターのことを話した。
思った通り,クライシスセンターと言っただけで拒否反応。
”あそこはだめだと言っただろ。ひどいところなんだ。”
と怒ってしまった。
”ここは違う場所なのよ。ハーレム。”
個人的に私の意見だが,ラファイエットよりハレームの方が聞こえが悪いが、この際,ハレームはいいところだと説明するしか方法がなかった。
”電話してみて?番号はメールで送る。”
しかし、かけるとは思えなかったので,私がかけた。
ここはベットがないと簡単に断られた。
またブルースに電話。
またかけて悪いんだけど,ハーレムのクライシスセンターにベットがないと言われたんだけど、
というと、今度はブロンクスの電話番号をくれた。
何度も電話して悪いわね。
と言うと、
気にしなくてもいいですよ。困ったらいつでもして来なさい。
と言ってくれた。
はっきり言って、
ブルースがくれる電話番号はどんどん北に向かって危険な地域に入って居るなと私は思った。
勿論,ブロンクスと聞いてグラムがかける訳がないので,私がかけた。
”月末はいっぱいになるのよ。ベットを見つけるのは難しいと思うわよ。それで、彼、お酒飲んでないのね。クライシスセンターって結構厳しいのよ。お酒が抜けていないと受け付けないわ。”
私が別れた妻でこんなことをする必要はないけれど、見かねて電話していると説明したせいか,彼女は凄く私に優しかった。彼女の説明でクライシスセンターというところがどんなところか分かったし、グラムが何を見たのか分からないが、彼の言うほどひどいところには思えなかった。
とにかく、努力はしたが、グラムを送るところを見つけられなかった。
仮にこの2つのクライシスセンターが空いていたとして、グラムが地下鉄に乗って、ブロンクスに行くとも思われなかった。
じゃぁ、私がお金を出して彼をホテルに入れるか?
彼はホームレスでどこか寝るところを探すか?
うちに迎え入れるか?
3択しかないようだった。
グラムが公園で寝ると電話して来た。
この際、公園に寝てもらおうと思った。公園に寝れたら、たいしたもんだと思った。
11時ごろ、電話が鳴った。
”寒くてとても公園には寝れない。”
思った通り意気地なしだった。
”で、迎えにこいと私に電話しているのね。”
”頼む。
車の中で寝てもいい。”
”どこのパーク?”
”47丁目の、、、。”
”わかったわ。自分が住んでいたマンションの前で待っていて。”
”ありがとう。”
”ケント,アンタのおとうさんは一晩も公園で寝れないそうよ。迎えに行って来るわ。”
’えええええ。ここに来るの?”
”仕方がないわね。この事態では。そのつもりしなさい。
車の中で寝ると言っているわ。”
ケントは本当に嫌な顔をして、
”車の中なんて、嫌だ。”
”じゃ、地下はどう? 今日は地下で寝てもらうわ。それでどう?”
ともかく、グラムがここに来るというこということ自体に問題がある。
また、ブルースに電話した。
クラーシスセンターは無理だったこと、グラムが公園で寝れないこと、私がここでそこに入るまで面倒を見るから、酒は絶対に飲ませない。
できだけ早くベットを見つけて欲しいと頼んだ。
ついにブルースはこう言った。
フーディ、明日の朝また電話をしてきなさい。キャンセルが入るってこともあるから。
エキサイトにもブログを移動中
14 年前
0 件のコメント:
コメントを投稿