2010年2月2日火曜日

21.神様は優しい。

車に乗り込んでGPS(ナビ)にリハビリの住所をインプットして出発。
”堪忍しているグラム”からの言葉はほとんどなかった。私も一体、何を話しかけたのか覚えていない。15、20分の運転だったので,あっという間に着いた。
ナビは目的地だと言うがそこには建物がないのである。
何処から入るのか迷った。グラムは私が間違っていると、方向を支持した。
しかしその方向は間違っていて,私が選んだ道が正しかった。
仕方なく私はグラムにこういった。

やはりあなたはまだ自分の行くところが分かっていないらしいわね。

私のことを黙って聞いた方が良さそうね。


車を停め2人でビルに入った。ビルは奇麗だったし、一階の受付の人も優しかった。
悪いところにきたとは思えなかった。
人里離れていると言う場所ではある。バスは出ているようだったが、車以外のアクセスしかなさそうだった。散歩をするのに悪いところではなさそうだ。
私達の行くのは6階だった。そこが彼の行くところであった。
広いホールに机とソファ、閑散と置かれていた。
アットホームな感じはない。
そこにいた受付の女の人に今日から御世話になるグラムで、ブルースに会いたいと私は言った。
彼女はグラムがどこから来たかとを聞いた。
グラムは私のところにさせてくれと言ったが、そういう訳にもいかない。
私は私の立場や彼の状況を説明して、彼がホームレスであることを話した。
すると、グラムはコネチカットからき来たとメアリと一緒のいた場所を言った。
受付の彼女は私に緊急の連絡先にはなれないかと聞いた。
それならなれると、その書類に私のインフォメーションを書き込んだ。
しかし、メアリがその立場になるべきだと私は思っていた。
しかも、グラムもコネチカットに住んでいると言っているのだ。
男の人がドアから出て来た、私はてっきりブルースだと思った。
"ブルース?”というと、
”いいえ、僕はカール。”
違う人だった。そして、グラムを連れて中に入っていった。
10分程して戻って来て、じゃ、カバンを持って中に入ろうと言った。
どうやら、飲酒のチェックだったようで、グラムはパスしたようだった。
”携帯は持っていますか?”
とグラムに聞いた。
”はい、持っています。”
と見せると、
”彼女に渡してください。電話やコンピューターは持ち込めません。”
彼の電話は私の手のひらに。
私がどれだけこの電話をほしがっていたか!
実際、今はメアリの電話番号をキャロルから聞いて知っているので、用がないといえばないが、この電話に真実が眠っているのは明らかだった。
そして、グラムがこの電話が私の手に入らないように肌身離さずに持っていたのに、有無を言わせず、電話は私の手の中に。

電話を握りしめて、神様は本当に優しいと思った。

けれど、その電話を持って帰ったもののその電話が鳴っても出る気にはなれなかった。
その電話は私のサイドテーブルに置かれた。

私の仕事はまだ残っていた。Pのところからグラムの物を引き取ってこなければならなかった。
メールで連絡した。
私の都合のいい時間や日を書いて、Pの都合のいい時と合うようならば、取りに行くと。
すると、明日の夜なら、よいが出来ているというメールが帰って来た。
ではケントのアイスホッケーの練習の後に取りに行くとメールを返した。
夜中なら道がすいていて15分位でで行けるし、駐車も楽だと思った。

グラムの電話をポケットに入れた。Pの連絡先は私の電話にも入れたが、万が一間違っていたら、グラムの電話を使えばいいと思ったからだった。
ケントは新しいチームに入ったばかりで私はチームの両親たちを誰も知らないので、練習を待っている間、話し相手もいないので、グラムの電話を取り出してみた。そして彼のメールを見出した。
すると、一ヶ月前からのメールがそこにあった。その一ヶ月は私が日本に行っている間のメールだった。
神様が”読みなさい”と言った気がした。
Pとのメール、メアリとのメール、彼のクライアントのメール、
読み出したら、最初から現在まで読まなくては気が済まなくなった。何よりこれらのメールはは、Pに合う前だったので随分彼らの関係を知るのに役に立った。
Pは酒浸りのグラムに優しく接したことは、メールの書き方で分かった。
そこにある名前は彼のイギリスやスコットランド、ノースキャロライナの家族以外、そしてメアリ以外、たった一人の名前も私は知らなかった。

アメリカに戻ってからのグラムのことを知らないと言ったメアリはグラムにひけを取らない嘘つきだった。真っ赤な嘘は電話の中にあった。
メアリ宛のメールが一杯だった。愛している、つらいと言った言葉が延々と書かれ、病気のメアリの母のことを気遣う言葉が多かった。
メアリはクールな返事を書いていた。
淡々と、あなたはこの状況から自分で這い出せるはずだと言うのである。そんな風に酒を飲んでいるとPにも追い出されるわ。と書いてあった。
メアリは私にPのところにいることは知らなかったと言ったのだ。
どうして、その嘘が必要だったのか?私にはわからない。
私のこともこう書いてくれてあった。
”あのひどい結婚から出て、君に愛を。”という文を読んだ時、私はピエロの顔をして立っていた。
この言葉は12年前にも聞いた。

0 件のコメント:

コメントを投稿